巨大感を演出する工夫のお話 -製作編-


モビルスーツは18mからの巨大なロボットということもあり、そのスケール感を表現するために様々な手法が存在します。マーキングや、ウエザリング、人などの対象物を添えるなどは代表的なスケール感表現だと思います。
今回はmat modeling service でこれまで使ってきた「あ、、これはいいかも」という巨大スケール表現をあらためて紹介します。
すでに有名な表現や、憧れのライターさんの表現を習ったもの、小さなチャレンジ、うまくいった表現もあれば、アイデアはいいかもしれないけど全然伝わってないよ?というのもありますが、今回は製作編をまとめて!(今回はちょっと長いよ)

1.人の気配がする、人スケールのディテール
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パイロットや整備クルーなどのフィギュアを置く。
最も直感的にわかりやすいですね。人がこれくらいのサイズなので、このメカは巨大だということがよくわかります。逆に 人目線で見てしまうと、こんな感じのディテールで良かったのかと落ち込みますw

一方で、直接にフィギュアを置かなくても、手すりや、人目線のコーションなどを人周辺に置くことで人の存在が感じられ、フィギュアを置くのと同等の効果を得ることができます

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このコクピット内の手すりは昔のモデグラ作例を見て、いつかやって見たかった手法です。白赤の注意色も初めて見たときはしびれました。

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このグリモアのアンテナなど人とは関係なさそうですが、胸の上面ではなく下面にレイアウトしたこと、先端に注意色(赤)をつけたことで、狭いメガファウナ内での整備環境が伝わったらと、、。
狭い環境、多人種、無重力に不慣れな登場人物などなど、ピット内で人が引っかからないようにするこのアンテナの工夫で人の営みが感じられたら、、、ってそんなユニバーサルデザイン的ストーリーを考えたのですが、やっぱり伝わらないですよねー、、w(そもそも、じゃ、なんでGセルフのアンテナの先端は赤くないのん?とかツッコミどころが、、)

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↑のようにメガファウナじゃなくっても人に向けてのコーションがあれば、少しは効果が伝わるのではないかと、、と思いながらも今後も制作を続けよう。

2.色の工夫
黒の代わりにダークグレー

このブログでもよく話しますが、絵画で黒をそのまま使うことはしません。どんなに暗い部分でも空気を通して伝わるので、クロそのものが目に届くことはないからです。(宇宙空間ではその限りではないですが、、。)なのでこの下画像のザクの各装甲の裏の塗りつぶした黒に見える部分でもダークグレーを使ったほうがスケール感を伝えやすいのです。ウチのダークグレーの目安はタミヤのジャーマングレーです。これでも十分黒に見えますよ
http://matmat825.blog69.fc2.com/blog-entry-848.html
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マーキングのコントラストを調整する
前々回のエントリーで紹介した内容ですね。マーキングとベース色のコントラストを調整すると、おもちゃっぽさが軽減されます。以下リンクにマーキングのコントラストをコントロールするHow toを紹介してますので参照ください
http://matmat825.blog69.fc2.com/blog-entry-914.html
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メタリックカラーの輝度を調整する
これも前回のエントリーで紹介しましたね。
これらのエントリーで言いたかったのは、いかにトイ感を払拭して、何メートルかの空気を経て実在するかのごとく模型が存在するための違和感をコントロールするHow toです。という内容だったのかと書いた本人が今気づいた。
http://matmat825.blog69.fc2.com/blog-entry-915.html
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3超巨大MAの制作で挑戦したこと
MSを傍に配する

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これは前述のフィギュアを添える手法と同じですね
しかし個人的にはMSのフィギュア添えよりMAのMS添えのほうが盛り上がるんですねー なんで? 超でかいもの(MA)の傍にあるのはよく知るでかいもの(MS)、という論法。

読ませる系マーキングを使わない
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誰がそのテキストを読むのか?MS?自分の過去の完成品を考えると赤面してしまいます。ここはコーションというよりグラフックに徹するのが吉ですねー(ちょ、ちょっと、こんなこと書いちゃってるけど、読めるマーキング入ってるよ、、w)

虎の威をかる
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MSとは桁違いの巨大感を表現するためには、メカの集合体のような、よく知るモチーフを見出す必要がありそうだということで考えたのが石油プラント。撮影対象として大人気ですよね。
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このディテール感を盛り込むことができれば、一皮むけた巨大感が、、と思ったんですが、どうでしょうか?ちょっとやりきれてなかったかもですねー。誰もが知る巨大な虎の威をかる作戦です。

ゲージ部分を作り込む
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そうそう、エルメスの巨大感を演出するって、ビットがMSとの巨大さ加減判断のゲージとなるのでは?むしろビットとMSのディテール勝負になるのでは?ということでここは特に慎重に仕上げました。直接対峙するアイテムには対峙する相手と同様のディテールの配慮が必要なのかもしれないですね

4うまくいかなかったけどスジは良さそうな例
MSで馴染みのデザインを踏襲する

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その1、例えば特徴的な2門のビーム砲はメガ粒子法と仮定して、センチネルのディープストライカーのメガ粒子砲のデザインを踏襲しました。あのSガン比ででかく感じたメガ粒子砲がこの大きさということはこのMAどれほどでかいか、、と。(本当はもっとでかいですが、、)

その2、例えばエルメス下部の今回追加したプロペラントタンクの基部ディテール
これはフルアーマユニコーンガンダムの巨大なプロペラントタンクの特徴的な本体接続基部を踏襲しました(以下略w)

上記2例はスケールが微妙だったのか、再現度が足りなかったのか、イマイチだった感もありますが、巨大感を演出する手法としては有効だと信じてます。というのも元ネタがありまして、今でも覚えてるのがゼクツヴァイの手のサイズの表現です。
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このように本体からはアンバランスにも見える手のサイズですが、これを見るだけで、(ゼクが横に並ばなくても)手がゲージとなって巨大なMSということが直感的にわかる素晴らしい表現ですね。
その他にセンチネルで言えばセンチネル最終回ビグザムのひざ関節横の白丸部分もビグザムサイズの白丸すぐ横に二重間接風に通常MSサイズの白丸部分があったのにもうなりましたね。

このようにまだまだ試行錯誤中ですが、今後もいろんな表現方法にチャレンジしていきたいなと。



効果的なメタリック塗装仕上げについての話


今回も前回に続き、小ネタのHow toを、
メタリックカラーの使い方ですが、自分も皆様もこの数年で随分変わってきたなと感じます。かつては「金属質感をアピールする」ギラギラ仕上げが多かったのですが現在は「形状をより際立たせる」などメタリック塗装の効果に多様性が出てきたように感じます。
メタリック塗装仕上げは光を反射する特性から曲面の立体感や角度のついた面の立体感をより強調する効果があります
そんな例ですぐに思いつくのがバーニアなどのメタリック塗装ですね

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こんな感じバーニアにメタリック塗装は本当によく似合う、欠かせない。

今回はその他にメタリックの塗装仕上げをこんな効果を出すのに使っているという例をいくつかご紹介します

1.奥まったディテールの存在感UP
奥まった部分でもちらっと、でも存在感を伝えるメタリック仕上げの例です
こんなに↓鈍いメタリック仕上げですが、曲面に塗装することで、そのハイライト部分が暗い部分でも主張します

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デルタガンダムの脇腹のシリンダー状ディテールも

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バイアランの足の付け根の球状の関節部分も

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バイアラン同様のνガンダムの球状パーツや手首のリング状の部品など、影になってしまう部分でも部品の存在感を伝えることができます。

2.シャープな形状をより強調
ゾゴックの頭部のブレードなど
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浅い角度のついた面で構成された部品の立体感を、その立体だけで表現するのは難しいのですが、メタリック塗装をすることでシャープに見せたいディテールの立体感を強調することができます。シャープな造形をよりシャープに見せることができます

バズーカなどの筒部分
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綺麗に成形された筒の製造精度感を強調することができます。この精度感表現を積み重ねることでプラで構成されているように見えなくなってくるのではないかと期待しているのですが、まだまだですねー、、w。

3.一体成型品の立体感UP
動力パイプの立体感
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パイプが別部品ではなく一体成型のため、一般的な塗装だと立体感が乏しくなってしまいがちです
こんな時にメタリック仕上げは立体感を強調し、パイプ部分がマスターグレードのように別部品で構成されているかのような効果が期待できます
また、最低限のスミ入れ以外汚してないのに汚れた感が感じられたのは収穫。

4.擦れる部分に
部品同士が大きなエネルギーで擦れる部分
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こんなカタパルトデッキのレール部分などにメタリック仕上げを施すと、自然な感じに仕上がりますね。下地はあえてカタパルトデッキが射出される方向にヤスリ目を残したヘアライン仕上げにしたのですが、いまいち伝わらなかった、、(アイデアとしては面白いんですが改善の余地大アリです)

5.ツヤ感のコントロールは効果大
最近はメタリックカラーの使い方も多様で、特に作品全体のバランスを考えて、メッキ調のギラッとした仕上げは減ってきているように感じます。フラットコートで金属光沢のギラつきをコントロールすることが一般的でしょうか。そのコントロール加減でも面白い表現ができるという例を紹介します。

メタリック塗装の艶違い仕上げ
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フラットコートを軽く吹くとメタリックの粒子感が少なくなり、若干シルキーな印象になります
メタリック吹きっぱなし部分とフラットコート仕上げ部分のコントラストを意図的につけてみると、立体的な仕上がりになり、高級感が出ます(腕時計などの金属部品の表面仕上げによく使う手法です)。トールギスのような高級感のあるキャラクターなどに効果的ですね。

6.いつも使っている色は

メタリック系でいつも使っている色は大体決まっています
もうこの↓組み合わせばっかり

メタリックグレー:クレオス スーパーアイアン
フラットコート:フィニッシャーズ スパーフラットコート
*ギラズールの動力パイプのみクレオス スーパーアイアントスーパーゴールドの混色です

 

その他のいつも使ってるカラーはこちらから
http://matmat825.blog69.fc2.com/blog-entry-826.html

今回はここまで。ではではー。