1/60の表現(ディテール工作編)


スキルとセンスと道具の進化で、模型の表現がどんどん細かく繊細になってきています。特に最近の1/144スケールのガンプラの作例の繊細なディテール表現はすごいですよね。
そんな状況の中、今回、1/60ガンダムの制作では、画像で1/100に見えてしまわない演出をいくつかトライしましたので紹介したいと思います。
1/100では細かすぎてなかなかやんないだろう、というディテールもありますが、1/60のキャンバスは広大なので、実際はそんなに細かいディテールではない、というところがポイントです。

・マイナスモールドの内部のディテール
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1/100スケールまではマイナスディテール底面に影色を置いて問題ないという約束(?)ですが、
(がんばって、マイナスモールド底面のスジボリディテール+塗分け、、という感じでしょうか)
1/60だと大きいものでは線幅が1.5~2mm程度のものもあり、底面が結構見えてしまいます。
そこでそのモールドの意味を考え、さらにそれらしいディテールを考えてみます。
今回はロック解除のレバー的に解除されて、レバーが少し開き、角度が付いた状態を表現しました(構造は僕にもよくわかりません)
気をつけたのは全身に至るメンテナンスハッチの開き具合の変化とコントロールです。こんな小さい部品まで元気よく「ガバっと」開いてしまうと、
完成品の受ける印象がやんちゃすぎてしまいそうだったので、こんな感じの開き角度にしました(よくわかりません)
使ったのはアンクル形状やコの字形状の断面のプラ線材です。

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マイナスモールドの幅に合わせて、切り出して、マイナスモールドの底面に斜めに見えるように貼り付けて終了です。

図解-03-1
(説明しにくいので図を見てください)

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このように至る所のマイナスモールドに表情をつけました。
今回の1/60ガンダムの制作では、このプラ線材をハッチのヒンジの部品で使ったり、多用しています。
自分なりに素材の使い方を発見して、キマった時はホントにうれしくってすぐに皆に教えたくなります。

・メンテナンスハッチのヒンジ
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以前エントリーしたこちらの記事を見てください、これも結構な発見だと思ってる(自分比でね)
基材を組み合わせた表現、宇宙世紀っぽいヒンジを100個作る方法>>
http://matmat825.blog69.fc2.com/blog-entry-1022.html

・メンテナンスハッチ
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ハッチ厚みをコントロールし、段々モールドを付け、意味深く(?)します。
今回キットを切り抜いたパーツを使わずに、新たに切り出したプラ板を使ったのは、本体から切った分サイズが小さくなってしまったことと、プラモデルの成型品のプラ肉厚の処理が難しかったからです。
さらに表面の微妙な曲面をつけるにあたり、指などでつけた曲面の「クセ」は1枚だとそのうちに「クセ」がとれて、曲率がもどり、平面に近づいていきます。
しかし、おなじ「クセ」をつけたプラ板を二枚貼り合わせることで、その曲率を固定することができます。
話はちょっとそれましたが、段々モールドは2枚貼り合わせの必然性から出た表現でもあります。(どうせ二枚張り合わせるなら微妙なずれを段々モールドとして楽しもう、的な。)
また、2段それぞれで塗り分けてインナーとアウター感を強調しました。
私たちは模型を作りすぎている(W)ので成型されたパーツのプラ肉厚を敏感に感じ取ってしまう能力を知らず知らずのうちに実装しています。
今回はハッチやキットのくりぬき部分、インテーク穴などプラ肉厚が出てしまう部分は、削ったり、今回のハッチのように新造したりして「バレない」ようにしています。
そういった工夫が1/60だと結構効いてきます。

・メンテナンス(中ぶた)ハッチ
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中ぶた的なものを加えました
実際に必要かどうかわかりませんが、これがあるなしで劇中の映像を(強引ですが)イメージしてみましょう。
「バカ!(ハッチが開く音)」で終わるか「バカ!シュー、バカ!」とアクションが増えるか、後者のほうがかっこいいような気がしませんか(←子供??)。
実際見ごたえはアップしたような気がします。
1/60で、穴とそれをふさぐフタだけでは、同じ表現をすると見ごたえ的には1/100に負けてしまいますので、中ぶた追加です。
実際に車をフルハッチオープンしてみるとボンネットの中にエンジンカバーやバッテリーカバーなど「中ぶた」が存在します
今回はフルハッチオープンなので、中ぶたもオープンです。
中ぶたの表現もプラ板を曲げたり、エッチングパーツを曲げたり、前述のヒンジディテールを付けたり、デカールを貼ったりして、あの手この手で1/100との差別化表現しました。
そうそう、この中ぶたも合わせると今回のハッチは大小で64枚です。ひー。

・手すり
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1/100までは手すり的な記号があれば、、という感じで、実際の寸法より太めの径の手すりにならざるを得ないのですが、1/60ならば、実際に握れそうな寸法がぎりぎり可能です。
例えば実寸で直径20mmとするならば、1/100ならば0.2mmで、ちょっとそんな細さの線材の確保や、工作がしにくくなります。1/60だと直径0.33mmになります。今回、各部の手すりは0.3mmの極細真鍮線を曲げて制作しました。塗膜厚さを考えるといい感じなのでは。
リアル縮尺の部品の再現は、そのスケールで再現できる最小値が全体のスケールを感じさせるよりどころとなるので、それを大いに利用してみました、、という例です。
手すりの塗装も、赤などのワンポイントになるようなカラーを使って、そのカラーが効果的に見えるように、全体の色彩設計をすれば、ものすごく模型映えがしますよね。
(カラーは続編で!)

・まとめ
今回のHow toの共通点としては、1/60では解像度が上がるので、1/100では見えてこなかった、何かと何かの間や中にあるものも表現できる、リアルなスケールで表現できる。表現できるのであればやる、、それが1/60ならではの価値や差別化につながる、ということかも。
そうすれば、1/100のディテールを1/60でも全身に展開して、全体が細かいディテールでボヤっとなってしまうことにはならないのかも。これがスケールなりのディテールのメリハリなのかも。
以上、1/60の表現(ディテール工作編)でした。塗装編、仕上げ編もあるんですが、それは1/60ガンダムの公開後に!